Prince of Tennis









部活の送別会も終わって、あとはこの部室にある荷物を整理するだけだった。

この1週間はその1日1日を惜しむかのように、ゆっくりと過ごしてきたような気がする。
例えば部室の窓から見える夕焼けの綺麗さとか、
コートの中から夜空を見上げたときの星の綺麗さとか、
3年間変わることなく見続けたものが明日からはもう見ることもないんだな・・・・・
と思うと正直寂しさは隠せなかった。


手塚部長ほど、青学テニス部のことを強く思っていたわけじゃない、
その後を継いだ桃先輩ほど部長としての仕事をこなしていたわけじゃない。
けど、それでもこの場所に執着していなかったわけじゃなくて――――――。

ここはテニスの楽しさを知った場所。
最後まで言うことはなかったけれど、尊敬していた先輩たちと過ごした場所。
少なからず苦悩を覚えた場所。
そして・・・・初めてと会った場所。
ここで得たのは、捨てられない思い出ばかりだ。






最後の仕事として残されている部誌の記入。
止まったままの手をぼんやりと眺めながら思う。
明日からは新しくなる部誌。
まだ数ページある余白がなぜだか感傷をあおってくる。
らしくない、と思いながらも拭えない寂しさ。

パラパラとめくった部誌には、たくさんの文字列。
必要なことしか書かなかった自分のページ、
部員の成長日記のようになっている副部長のページ。
それから・・・・たまに見える綺麗で流れるような文字。
らしい視点から捉えた部内の様子が書き綴ってあるページだ。

部長になってからもいまいち直らなかった遅刻ぐせやなまけぐせ。
それを適度に甘やかしたのはで・・・・・。
あいつがいたからこそこの代は、成り立っていたんだと思う。






もうすぐ地平線に沈みそうな太陽の光が窓から細く、入ってくる。
思い出にひっぱられそうになる意識を感じ、
自分の中の気持ちに区切りをつけて書き終わっていない最後のページへと戻った。

いつか見た手塚部長の書いていた部誌の最後の一行には
「You can do it!」の言葉。
桃先輩の時には「Don't give up!」だった。
その時はありきたりすぎて思わず笑ったけれど
今ならなぜその言葉だったのか分かる気がする。
飾り気のない、その言葉だったからこそ最後に書きたかったんだと。
きっと2人共、それだけの思いをこめてここにいたんだと思う。



リョーマは何か書こうとシャープペンを紙面につけながら
そのままの体勢で考え込む。
何回かペンを動かしても、最後の一行に書く言葉だけは思い浮かばず
イスの背に身体をあずけた。

何気なくめくっていった部誌の最後のページ。
本当にきまぐれで見た無記入のままのページの一番下には
流れるような文字が書いてあった。



        『 お つ か れ さ ま 』



そんな所に書いたって、自分が気づくかどうかも分からないのに・・・・・。
隠すように、けど堂々と書いてあるその文字を書いただろう人物を思い出して、
痛いくらいに胸がしめつけられるのが分かった。

なんでは、こんなに人の心を動かすのがうまいんだろう・・・・・。
こんな絶妙なタイミングでこの言葉を見つけてしまう自分も自分だけど―――――。






走り書きのようにして文字を綴った。
ありがとうもがんばれも、楽しかったも全部この場所に置いて、
また新しい場所で夢を追いかけ続けたいと思う。






後ろ手で閉めたドアを、振り返ることなく歩き出した。
ズボンのポケットにある携帯を取り出し、
いつもはかかってくるだけの電話を久しぶりに自分からかけてみた。


?―――――――・・・・」














"I can believe to win of you.
And with best wishes......!"

お前らならやれるよ
幸あれ!