【大人気アイドル★ブルーブラック】













今日もファンたちの交流サイトは大盛り上がりを見せていた。常にも増して多いテンションの高い書き込みや絶叫系コメントは大成功に終わったコンサートがどれほど素晴らしいものだったか如実に伝たえ、落選したファンたちをも興奮させる。次々に投稿される発言集や行動集、衣装まとめを含んだ曲ごとの詳細なレポート、販売されたグッズや使用された星型の紙吹雪、メッセージの書かれた銀テープの写真――関係するありとあらゆるものが瞬く間に共有され、さらにそれがSNSを通じて広がっていく。まさにお祭り騒ぎである。
それは一部な特殊なファンたちが集うアンダーグラウンドでも同じことだった。むしろ本日の多大なる燃料投下による凄まじいまでの盛り上がりはこちらの方が上かもしれない。



某所。第965チャット場――☆コンサート用39スペ。



Sys > 青が今回もやらかしてくれたあぁぁぁぁぁあぁぁwww(xx/xx Thu 22:19:30)
ちょ > 同意!!!!な ぜ そ こ で 腰 を 抱 く 必 要 が あ る の か 説 明 し ろwwwwww(xx/xx Thu 22:19:35)
バキャーノ > ってか登場の時点で既に事件発生ww(xx/xx Thu 22:19:36)
すぐる > なぜお前ら一緒に出てきたしww明らかに演出と違うwwww(xx/xx Thu 22:19:49)
葵 > 誰も照らさないスポットライトが可哀想だった・・・w(xx/xx Thu 22:19:55)
るるらるら > 観客も???だったwww(xx/xx Thu 22:20:2)
m★a☆y > そして最初から右の方見てたファンの絶叫www(xx/xx Thu 22:20:8)
krlv > 黒をwwwwお姫様wwwだっこwwwwww(xx/xx Thu 22:20:15)
佐藤 > 曰く、ハプニング→登場間に合わないピンチ→青が黒抱えてダッシュww(xx/xx Thu 22:20:26)
アラララ! > 分かった分かった事情があったのは分かったよ!だがなぜお姫様だっこしたしwwww(xx/xx Thu 22:19:30)
Sys > wwwwwたぶんwww青がwwそうしたかっただけwwww(xx/xx Thu 22:20:36)
まこ > wwwwwwww(xx/xx Thu 22:20:37)
m★a☆y > www(xx/xx Thu 22:20:39)
@腐 > 否定できないwww過去の言動を思い出すとwww否定できないwwww(xx/xx Thu 22:20:41)
えふぃ > Maybeのお前を守るために〜のとこめっちゃ黒目線だったと思うの私だけ!?(xx/xx Thu 22:20:50)
ちょ > あたしも思った・・・!気のせいじゃなかった!!!(xx/xx Thu 22:20:58)
すぐる > ま じ か !(xx/xx Thu 22:21:00)
PPP > そして今日も絶好調にエロボイス×エロボイスでした\(^o^)/(xx/xx Thu 22:21:9)
佐藤 > 青につられてえろえろしくなっちゃう黒萌えーーーーーーーー(xx/xx Thu 22:21:16)
世界のダダダ > いつものクリスタルボイスが行方不明☆(xx/xx Thu 22:21:20)
Sys > BB最高!もおぉぉぉぉぉ青黒大好きだあぁぁぁぁぁぁ結婚しろおぉぉぉ(xx/xx Thu 22:21:27)
wwcvw > 誰か黒がいろいろやらかしていた件についても教えてくれーーー!(xx/xx Thu 22:21:33)












BlueBlack――通称BB。
それは今まさにスターダムにのし上がろうとしているアイドル二人組の名前である。
結成からまだ1年という短い期間で既にシングルの初動や一回のライブ動員数の最高記録を更新したのは、もとからの話題性が大きかったのもあるだろう。
そもそもBBの黒、こと黒子テツヤは変幻自在ともいわれる飛びぬけた演技力で見る者の心を掴む人気俳優。子役の頃から積み重なるその人気は俳優という枠を超え、ここ数年はその人気に裏打ちされるように多方面な活動を行っていた。
バラエティーに出れば常の無表情で突拍子もないことをするお茶目さが可愛いと言われ、クイズ番組に出ればズレた答えでもドヤ顔しているのがおもしろい上たまに誰も分からないようなマニアックな問題にさらっと正解する不思議さがたまらない。ラジオのパーソナリティーを務めていた時は平坦な口調での容赦ないつっこみが人気を博し、ひたすらドSな発言ばかりするという回――黒子様降臨回と呼ばれており過去3回あった、などではハガキを読んで罵って欲しいというリスナーからの大量投稿よってFAXが壊れる事態を引き起こしたりもした、ある意味魔性の男。
ついには芯のある涼やかな声が好きだというファンからの要望によりCDデビュー。歌い手としての黒子は鍛えられた発声による安定した類をみない透明感のある歌声の持ち主で、それを愛したファンたちによってクリスタルボイスと呼ばれる。
そんな所属事務所の看板といっても過言でない黒子には一つの懸念材料があった。これだけ人気がありながら誰もが知っているスターというほどではないその原因――致命的ともいえる印象の薄さ。
演技をしている時には他者を圧倒するほどの存在感を放つ黒子は代償のように普段は人の中に埋もれる。芸能界という煌びやかな世界では埋もれる所ではなくむしろ見えないレベル。美しい空色の髪や真っ白い肌という色彩の淡さや繊細に整ってはいても派手ではない顔立ちも相まって、何の演技もしていないただの黒子テツヤである時はあまり周囲に印象を残さない。
彼のファンたちにとってはそんな所も魅力、となるチャームポイントであっても一般的に見れば演技が上手くて好きではあるけどなんか物足りないといわれる要因になっていた。


そんな中で、ある日激震が走る。
黒子テツヤのアイドルへの転身、それに伴うBlueBlackというデュオの結成。


なんの前情報もないままある日突然発信されたそれにメディアもファンもそして芸能界にも大きな衝撃を齎した。
黒子テツヤがアイドル!?目立たないのにやってけるのか?という驚きとともに二重に世間を驚かせたのは、デュオの片割れが数多くいる事務所所属のタレントたちではなく存在すら知られていなかった新人であったことだ。

BBの青、こと青峰大輝は全くの無名、しかも人気アイドルとなった今も経歴等が一切公表されていない。
無名の新人の起用は話題作りかと思われたが、黒子に並び立つ姿を一度でも見れば大きな過ちであることが分かるほど青峰という男は飛びぬけたスター性を持っていた。
絶対的なオーラを纏った野生的な相貌、自信に溢れた言動は傲慢を通り越し彼の魅力にさえなる。浅黒い肌に海色の髪という強い色彩を持ったずば抜けて長身の、しかもしなやかな筋肉に全身を覆われた青峰は容貌からして黒子と正反対とも言える。
結成当初は荒れた――特に黒子の古参のファンたちが。何を考えているのか分からないという声が圧倒的に多く事務所に抗議の電話すらかかってきた騒動は、わずかな期間の間だけだった。
正反対なのではない、一対なんだ。世間はすぐにそう、知ることになる。
そして身長差20センチを超えるという一見アンバランスな二人は、たった一年で誰しもが認める――出会うべくして出会った二人、運命のデュオだと呼ばれるようになった。




『彼といる時ボクはすごく自由になれます。何だってできるし何処にだって行けるような気になる。青峰くんはその存在に物凄いパワーがあって、隣にいると身体のどこかが満たされるようなそんな感じがあります。だからなのかもしれないけれど、彼と一緒の時は不思議なことに印象が薄いと言われることがないんです。むしろ自分で言うのは恥ずかしいんですが――鮮烈だと、そう言って頂くことがよくあります。ボクの中の自分ではどうにもできない部分を青峰くんはその存在だけでボクの表側に出してしまう。黒子テツヤという人間にとって彼は、確かに運命かもしれない』




世間が運命だといい、当人も運命かもしれないと表現したデュオBlueBlackは瞬く間にスターへの道を歩み始めた。
一番の売りはアイドルなだけあって歌とダンス。誰からもセクシーと認められる低音を武器とする青峰と、彼と歌うときだけクリスタルボイスと呼ばれる黒子の歌声が変化しとんでもない破壊力をみせた。黒子が「ついつられるせい」と弁明する、クリアであることは変わらないのにどことなく憂いを帯びた声が色気を感じさ、ファルセットなどは聞くものの背筋をぞくぞくさせるほどの威力となりファーストシングル『Maybe』の時点でBB=エロボイス二人組という認識が定着することとなった。
対してダンスは曲ごとに全く違った印象をみせる。見事な対照のダンスを踊ったり、メインとして歌いながら要所要所に動きを入れる黒子と運動神経のよさを存分に発揮する青峰のダンスだったり、体力のない黒子が途中でぱたりと動かなくなるネタ入りダンスだったりと幅が広い。特にどんな踊りも自分のものにする青峰のダンスは毎回違ったアドリブを入れることがあるほどでBBの売りの一部だ。
そして歌やダンスと同じぐらい人気の要となっているのが二人の仲の良さである。無害そうに見えて辛辣な発言やドSぶりが垣間見えたり、かと思えば天然か!とつっこまれることもある黒子が時にからかい時に甘えあるいは弄り倒したり、そうすることで強面で威圧感のある青峰の雰囲気が一変しまるで悪ガキ二人といった面がメディアを通して伝わるようになると一気に親しみが増して人気に火がついた。
トークの最中も歌っている最中も小さなネタが仕込まれることが多いBBにはネタ探し専属班なるファンも存在し、「今日のミュージック☆ミュージアムでGROWがトークしてる時すみっこで黒が青の衣装の紐をあみあみしてた!」などと世間を楽しませている。


そしてこれだけの材料がそろったコンビが別の意味で騒がれないわけもなく、BB交流サイトには深く巨大なアンダーグラウンドが存在する。
いわゆる腐ったお姉さま方が男同士を掛け算してきゃっきゃうふふと妄想を繰り広げる魔窟は、もともと黒子が俳優でのみ活動していた頃からひそかに存在していたが、BBの結成及び事務所が公式に発表した『青峰大輝は黒子テツヤの相棒となる為に芸能界に入った人間だ』という情報に激しく盛り上がり、以来何度も爆発的に人口を増やしながら巨大なものへと進化している。
常日頃の仲の良さはもちろん、垣間見えるお互いに対してのパーソナルスペースの狭さや一般的にさえ運命と呼ばれているほどの相性の良さでさえそういった嗜好を持つ女性を喜ばせる要素であるのに、BBは衣装をあみあみするような小さなネタから人口を爆発させる大きなネタまでたった一年で大量生産状態。むしろ供給過多でみな息も絶え絶え。最近のライブでは表に『青黒!』裏に『結婚して!』という団扇を持った人間が現れるほどである。
青黒!(私と)結婚して!に見せかけた青黒お前ら結婚してしまえ!という叫びはひっそりとしかし着実に広がっている。
そんな毎日が楽しい彼女たちを一番爆発させた事件といえば青黒愛好家たちの間で問題作と名高い、とある携帯会社のCMだろう。携帯電話役の黒子が日常生活を送る青峰にひたすらちょこちょこまとわりつくそのCMはあまりの可愛さに多方面から続編を待ち望む声が山のように届けられ最終的に5回シリーズとなった超人気作。そばにあると便利、ないとすごく困るけど、いつでも連絡が来ることが逆に面倒でもあるアイロニーを黒子は持ち前の演技力で見事にウザ可愛いく表現したが、同時に普段適当にあしらいつつも失くして焦燥した青峰が最終作のラスト、携帯である黒子を抱きしめる瞬間で終わるそのCMは青黒愛好家にとっては問題作すぎた。
彼女達の住処であるネットの奥の奥に存在する第965チャット場では放送直後から数日間、ひたすら絶叫が続いたのはまだまだ記憶に新しい。






そしてまた今日も公式の手によって一つの爆弾が投下された。






Sys > みんな公式サイト見てっ・・・!(xx/xx Fri 0:5:12)
佐藤 > やばいやばいやばいやばい(xx/xx Fri 0:5:30)
@腐 > キターーーーーーーーーー!!!!(xx/xx Fri 0:5:36)
えふぃ > まじでかぁぁぁあ!!!(xx/xx Fri 0:5:37)
ちょ > 続報を全裸大輝ぃぃぃぃ(xx/xx Fri 0:5:48)
m★a☆y > 待ってたよおおおおおお(xx/xx Fri 0:5:48)
krlv > みんな見た?見た!!!!????(xx/xx Fri 0:5:50)
Sys > みた!!!!(xx/xx Fri 0:5:52)
まこ > みた!!!!!!!!!!!!!!!(xx/xx Fri 0:5:54)
昴 > 見ましたっ(xx/xx Fri 0:5:56)
C席45 > み て し ま っ た(xx/xx Fri 0:5:57)
葵 > やばい死ぬ興奮して死ぬ(xx/xx Fri 0:6:3)
るるらるら > くっそ詳細はよ!!!!!(xx/xx Fri 0:6:6)
世界のダダダ > つ(xx/xx Fri 0:6:7)
すぐる > い(xx/xx Fri 0:6:9)
PPP > に(xx/xx Fri 0:6:10)
アラララ! > !(xx/xx Fri 0:6:12)
Sys > BBドラマ共演キターーーーーーーーーーーーーー!(xx/xx Fri 0:6:15)
@腐 > キターーー!!!!!(xx/xx Fri 0:6:18)
ちょ > 待ってたあぁぁぁぁ(xx/xx Fri 0:6:20)
世界のダダダ > ついにキターーーー!(xx/xx Fri 0:6:21)
Sys > しかし青の演技力はどうなんだーーーーー!?(xx/xx Fri 0:6:25)
くぅ > たぎるうぅぅぅぅ(xx/xx Fri 0:6:26)
えふぃ > 未知数でありますーーーーーーー!(xx/xx Fri 0:6:28)
すぐる > 予想がつきませんーーーーー!!!!!(xx/xx Fri 0:6:31)
PPP > でも共演ってだけでもうそれでいいーーーーーーー!(xx/xx Fri 0:6:35)
佐藤 > 禿同(xx/xx Fri 0:6:40)
wwcvw > 禿同(xx/xx Fri 0:6:43)
C席45 > 同意!(xx/xx Fri 0:6:46)
昴 > ほんとそう!!(xx/xx Fri 0:6:47)






同時刻、やはりBBファンサイトの表側でも大量のコメントが投稿され世間の間で連日連夜お祭り騒ぎは続いた上、『黒子テツヤ主演。青峰大輝はキーパーソンで黒子の元相棒役。むしろ黒子の役こそ元相棒の為に存在すると言っても過言じゃないぐらいの重要なポジション』という、落ち着きをみせた直後に発表された続報に表と裏の最大手サイトやチャットが落ちた。


のちに放送されるドラマ、黒子のバスケは豪華キャスト陣による話題性、実力派たちの真に迫った演技とドラマチックな人間関係や秀逸なストーリー展開でドラマ史に残る視聴率を記録した大ヒットドラマであるが、同時に青黒がその道の二次元の人気すら超える超王道カップリングに伸し上がる原因になったことはこの時はまだ誰も知らない。